「形意拳」は中央式太極拳を学ぶ上では欠かすことができません。
なにしろ王樹金老師の得意とするところですから。
まずは劈拳。次に五行拳を学びます。
その次に「十二形拳」というものがあり、それは動物の名前を冠しており、
生き物の形態・動態を象形として武術に生かしたものです。
先のブログで「ハイタカ」に触れましたが、次は「ツバメ」である「燕形」があります。
今はツバメの繁殖期の真っ最中で、河原などでもよく飛んでいます。街中でも見かけることと思います。
オスカー・ワイルドの「幸福な王子」でも有名ですね。
「燕人」といえば三国志演義の「張飛」ですし、春秋戦国の「燕国」といえば楽毅が居てます。
さて、ツバメの最大の特徴として「空中で飛びながら虫を捕食する」こことが挙げられます。
意外に思われるかもしれませんが、”飛びながら”餌を捕え、飛びながら食べる鳥は意外と少ないのです。
ハチドリなども飛びながら蜜を吸いますが、ツバメやヨタカなどは飛んでいる虫を捕食しますので、
そういう意味ではよりスゴイと思いますね。
水面上を飛行しながら水を飲みます。もちろん地上ギリギリを掠め飛ぶこともよくあります。
目の前を滑るように飛んでいく様をいつ見ても素晴らしいものです。見とれてしまいますね。
急激に速度を落としたり小さく旋回することもお手の物です。
細かい話をしますと、スズメ目ツバメ科の「ツバメ」とアマツバメ目アマツバメ科の
「アマツバメ」がいてまして、見た目は似てますがちょっと仲間が異なります。
どっちも高速で飛ぶということに進化した結果のそっくりさんなんですね。
ちなみに、中華料理の「ツバメの巣」はアマツバメ系のアナツバメ類です。
「ツバメ返し」「ツバメ落し」「ツバメ斬り」「飛燕」「燕尾剣」etc・・・武術にもたくさん名前があります。
ようやく十二形拳の「燕形」の話です。
急降下、旋回、超低空飛行など、さまざまなツバメの動態を象意として取り入れられています。
乙の字のような動きであるから「乙鳥」と書いてつばめと呼んだりもします。
もちろん形意拳各派によって差異はあるのですが、予想に違わず、けっこう難しいんですよね・・・。
なので意外にみなさんやりたがりません。
姉弟子はかつて李老師に「ツバメではなくペンギン」と云われたことがあります。
私はスズメです。
そうそう。易経のなかにも、ツバメは出てきます。
たしか「風沢中孚」の初爻に燕の辞があって、ナントカカントカ・・・。
私は周易は不勉強なので、また詳しく調べてみたいと思います。
初爻は、「虞」はよく考えること。「它」は他に心を移すこと。
「よく考えれば吉。他に心を移せば安きを失う」。
本業を固く守る時。心変わりは禁物・・・かな。
「燕啼きて 夜蛇をうつ 小家哉」
蕪村