借り物の言葉で恐縮ですが、「壁は他人から見えて自分から見えない厄介な代物」といいます。
ここでいう壁というのは主に心理的なものを指しますが、そこにもいろいろな意味が含まれています。
ある種の防衛本能でありますので、誰しもが持っているものですし発揮できて当たり前です。
しかし、発揮する時とところを間違えてしまうと、壁はどうしても自分を雁字搦めにしてしまいます。
学びの弊害にすらなる時があります。
その壁はさまざまな心理的要因、それこそ深層心理から出ていることが多いので、一筋縄ではいきません。
そして他人に見えて、自分には見えない、相当厄介な代物です。
「他人に見えて自分に見えない」というのを武術的に見ると、肉体的・心理的な隙であったりすることが多く、
守ることで逆に弱点を浮き彫りにしてしまっていることがあります。それに自分が気が付いていないので、
攻められる一方になってしまうのです。
また、壁のおかげで対人の間合い(太極拳の有効間合)に届かないのです。
練習でも技がかからないのは間合いが浅いことが多く、そこでもう一歩踏み込めばあっさりとかかってしまうことが多いです。
単純な対人緊張でもありますが、これが軽減されると倍ほどリラックスできて演武できます。
まさに「己を知る」ということでしょうか。
太極拳は、「内観」という行程をもって己を知ることを第一義とします。
内観とは簡単にいいますと肉体的・心理的に己を観察するということです。
問題点もとうぜん浮き彫りになるでしょう。痛みであれ、心理的抑圧であれ。
問題点として対処するのは大事ですが、それに囚われすぎるのもまた良くありません。
何とかしたいという思いもまた欲です。
しかし、基本的には「観る」ことが重要です。
・・・と書いたものの、あくまでも「理想」ですし、ここまで教室で四の五の云う訳ではありませんので。
ある日、こういうのが必要だな~って気づくこともあるかと思います。その日を待ちます。
ちなみに、わざと「壁」を作ることもあります。
有象無象の人混みや雑踏などで、結界というか気の障壁というか、そういうものです。
気分転換や余技であり、本職の方には到底及びません。